ウェッジウッドの館、リース・ヒル・プレイス

今年のナショナルトラストのガイドブックを眺めていたら、近場なのに未だ一度も訪れたことのない物件があることに気付きました。場所はサリー州の「Leith Hill リース・ヒル」と言う、イギリス南東部の最高峰(と言っても海抜300m程度)の中腹で、リース・ヒルそのものなら今まで何度も行きました。なのに何故、このお屋敷「Leith Hill Place リース・ヒル・プレイス」には一度も訪れたことがなかったかと言えば、一般に公開され始めたのがつい2年前だからです(更に冬季は閉鎖)。すぐにでも見に行きたくなり、今年の公開二日目(三月末)に、霧雨の降るような非常に寒い日でしたが、早速出掛けて来ました。
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リース・ヒルそのものにも、しばらく御無沙汰していました。頂上の中世の城を模した塔から抜群の眺めが楽しめる、ハイキングに最適な場所で、特にブルーベルの季節は最高なのですが、公衆トイレの全く無いのが難点でした。麓の一軒のみの高いパブを利用するしかなく…。館へは、元々リース・ヒル登山者用に設置された駐車場を利用し、「シャクナゲの森」を通って行きます。
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リース・ヒル・プレイスが見えて来ました。お屋敷なことはお屋敷ですけど、正直言って建物自体は非常に地味だし、手入れも余り良くありません。しかしこの館、実は歴史的には非常に面白いのです。
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屋敷そのものは17世紀に建てられましたが、その後、ウェッジウッド社の創始者で偉大な陶芸家&実業家であったジョサイア・ウェッジウッドの孫、ジョサイア三世の所有になりました。
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ジャスパー等ウェッジウッドの陶器があちこちに飾られているのは、その為です。
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ウェッジウッド社はストーク・オン・トレントにあるのに、何故こんなに遠く離れた、全く関係ない南東部に館を購入したのか?と不思議に思いましたが、工業会社は業務上やむを得なく中部に本拠地を構えているだけで、経営者が金さえあれば気候の良い南部に住みたがるのは、イギリスでは普通だそうです。
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何故か棚の上に、ちょこんと古い猫の縫いぐるみが(もしかしてビンテージ・シュタイフとか?)。
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そして、著名な生物学者のチャールズ・ダーウィンも、度々この館を訪れました。何故なら、ジョサイヤ三世の妻キャロラインがダーウィンの母親代わりの姉であり、またダーウィンの妻エマはジョサイアの妹でした。ダーウィンの母親も、元々ウェッジウッド家出身だったのです(つまり従兄弟×従姉妹同士で結婚した)。ダーウィンは、このリース・ヒルで、ミミズの研究に没頭したそうです。他にも彼はフジツボを熱心に研究しており、ガラパゴスで新種の動物を発見することだけが、偉大な生物学者のすることではないと教えてくれます。
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更に、イギリスの国民的な近代作曲家、Ralph Vaughan Williams レイフ・ヴォーン・ウィリアムスが、幼少時代をこの館で過ごしました。早くに未亡人となった彼の母親は、キャロラインの娘だったからです(つまりダーウィンの姉の孫)。
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このグランド・ピアノは、訪問者の誰でも弾いて良いことになっています。恥ずかしながら、私はイギリスに住むまで、ヴォーン・ウィリアムズを知らなかったのですが、イギリス本国では、返ってホルストやベンジャミン・ブリッテンよりも人気の高い作曲家だそうです。イギリスの民謡や古い教会音楽の収集・研究に努め、そこから影響を受けた、イギリス人の愛して止まない牧歌的な作風の多いのが、彼の人気の大きな理由の一つのようです。言わば、ハンガリーのバルトークや、フィンランドのシベリウスに近い存在ですね。
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しかしP太に言わせると、ヴォーン・ウィリアムズの作風は、ゲインズボローやターナーの風景画同様、余りにも「チョコレート・ボックス的(お菓子の箱にプリントされるような、イギリスの典型的な田園風景)」で、ちと退屈なのだそうです。全く口が悪い。この頭に本を乗せた子供の壁画は、ヴォーン・ウィリアムズの幼少時代、悪さをすると受けた罰を表しています。
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一般公開されているのは、一階と二階の一部。しかし時間制で、ヴォーン・ウィリアムズの音楽付き音声ガイドツアーで、ロフトのような三階を見て回ることが出来ます。かなり急で狭い階段を上り、通路も狭く段差があって歩き難いので、足腰の弱い人には不向き。ヴォーン・ウィリアムズが所有した1945年以降、館はナショナルトラストに譲渡されました。しかし、その後も賃貸として貸し出され、寄宿学校として使用されたりしていたので、結局一般公開され始めたのは二年前と言う訳です。
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二階の一室。何と暖炉もジャスパー仕様。
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ただしこの館、未だ公開され始めて日が浅い為、インテリアが余り揃っておらず、多くの部屋がガランと侘しい、お屋敷らしからぬ状態になっています。このホールの電灯なんて、イケアでも一番安い紙製提灯だし。しかしこれでも未だマシなほうで、三階なんて裸電球でした…。音声ガイドにプロの俳優を起用して、お金を掛け過ぎたのか、これから徐々に時代に合ったアンティーク家具を買い揃えて行くのだと思います。
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一般のカフェも未だ入っておらず、地元のボランティアが、厨房でセルフサービスの寄付金制でお茶やケーキを提供しています。と言っても、プロ並みの出来栄えのケーキばかり。
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そんな訳で、食器も各自持ち寄った寄付品なのか、見事にバラバラなのが楽しい。
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ここで、またしてもクリーム・ティーを食べました。全くデザインの統一されていない茶器でも、意外と雰囲気はまとまって見えるから不思議でしすね。一部はウェッジウッド社製のようです。
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更にティールームのあちこちにも、陶器が飾れています。
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今後リース・ヒルを訪れる際は、ナショナルトラスト会員なら、この館のトイレを利用出来る訳ですが(笑)、因みにトイレの一つは、一般家庭のバスルームのまんまでした。水圧が非常に低いのか、トイレの水の流れが悪い為(イギリスでは良くあること)、紙を使用する時以外は水を流すなと注意書きがあります…。
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館の南側は、こんな丘の斜面になっていて眺望抜群。
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惨めったらしい天気の日でも見事な眺めなので、晴れた夏の日にはさぞや美しいことと思います。
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このキッチンに隣接した小屋は、左がチーズ&バター製造所、右がビール醸造所。自家製を作っていたなんて、やはりイギリスの金持ちは違いますね~。
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ダーウィンの研究に因んで、ミミズも飼育されています(笑)。古家具を利用した、手作り感溢れる飼育箱。
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庭も未だ発展途上なので、立地は抜群なのだから、これから素敵な庭園になって欲しいと思います。出来れば、イングリッシュ・ローズの「The Lark Ascending (ヴォーン・ウィリアムズの楽曲、邦題「揚げひばり」から命名)」や、「チャールズ・ダーウィン」「ウェッジウッド・ローズ」を植えてくれると良いな。天気は悪くとも、非常に興味深いお屋敷で楽しめました。今後は、益々充実して行くものと思われます。
 
  
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by piyoyonyon | 2015-05-22 15:35 | 旅行・お散歩 | Comments(2)
Commented by 真木 at 2015-05-24 21:41 x
ダーウィンの息子の娘、つまり孫娘が書いた
『ダーウィン家の人々』を読んだばかりです。
リースヒル、こんなにシンプルなお屋敷だったんですね。。。
Commented by piyoyonyon at 2015-05-26 17:14
真木さん、ダーウィンの孫娘の本、面白うそうですね~。
私はこの館を訪れた後、
ダーウィンが登場する「ザ・パイレーツ!」と言う
アードマンのパペット・アニメが再び見たくなりました(笑)。


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