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ウラン・ガラスのテーブル・ウェア

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これらの古風なガラス器は、私ではなくP太が買ったものです。どれも、20世紀前半のもののようです。一体彼がアンティークに手を出すとは、どういう風の吹き回し?と言ったところですが、ルイスのアンティーク・モール巡りをしている際、「Vaseline glassヴァセリン・グラス=ワセリン・ガラス」と呼ばれるアイテムを幾つか見掛けました。ワセリン・ガラスは、日本では「ウラン・ガラス uranium glass」と呼ばれるもので、その名の通り微量のウランを含む為、暗闇の中で紫外線光を当てると、幻想的な蛍光グリーンの光を放つと言う特殊なガラスです。それが、P太の科学心を俄然くすぐりました(元々ガラス製品は結構好きだったらしいのですが)。本当にその場で買いそうな勢いでしたが、この手のアイテムなら、フリーマーケットでも見掛ける!と私が説得し、これらは実際後日フリマで「それらしきガラス」を買ったものです。
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日本でも、骨董市等で何度かウラン・ガラスを見掛けたことがありますが、何せ当時は非常に高価だったので、自分で買いたいと思ったことは一度もありませんでした。ところがイギリスのフリマでは、「これ、もしかしてウラン・ガラスじゃなかろーか」と思えるものに、度々出会うことがありました。ガラス製品自体が、かなり昔から庶民の間で、日本よりもずっと一般的に普及していたようです。しかし、ウラン・ガラスかどうか確かめる為には、ブラック・ライト(紫外線ランプ)を購入し、暗闇で紫外線光を当てなければなりません。
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なので、アンティーク屋等で「ウラン・ガラス」と明記されている場合じゃない限り、その場で判断することは不可能ですが、「当たり」を付けること位なら出来ます。透明に薄く蛍光っぽい色が付いた、戦前の製品らしい古めかしいガラス器。色はレモン・イエローと黄緑が圧倒的に多い為、英語圏では良く「ワセリン・ガラス」と呼ばれますが(厳密には完全に同意語ではないらしい)、実際にはピンクや水色、茶色、透明ではなく乳白、フロスト加工等も、稀に存在するそうです。現在のガラス器にも、時々蛍光塗料で着色したものはありますが、ウランは含まれません。ガラスの着色にウランが使われるようになったのは19世紀中頃からですが、盛んに製造されたのは20世紀前半のようです。特にアール・デコ時代のデザインは特徴的で、この頃からガラス製品の大量生産が可能になったらしく、フリマでも見付け易いと思います。油を塗ったようなヌメリのある質感も、ウラン・ガラスの特徴の一つだそうです。まあ外れたこところで、フリマで買ったものなら損失は少ないし、ガラス器として魅力的なら十分だと思います。
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今回P太が買った、「ウラン・ガラスかも知れない」博打ガラス器は、四つで4ポンドでした。まずAは、高台がいかにも古(いにしえ)のヨーロッパっぽい優雅なケーキ・スタンド。ただし場所をとるから、収納は不便です。皿部分に少し深みがあるので、本当はフルーツ・スタンドかも知れません。一見カット・ガラスのように見えますが、鋳型にペースト状のガラスを流し込んで形成されているようです。
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次のBは、やはり柄が中々繊細で美しい、いかにも涼やかなプレート。四つの中で、一番薄い色です。こちらも、カット・ガラスに見えて型成形です。大きなヒビが入っているように見えますが、形成時に付いた突起の線です。この時代の型押しガラスは、未だ技術が発達しておらず、線が目立ったようです。
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CとDは、この中では一番ウラン・ガラス臭い、元からまるでバスクリンのような怪しい蛍光色の大ボウルと揃いの小ボウル。トライフル等のデザートを食べる為に、使われていたようです。デザイン的にはシンプルで、昔母が好物のトコロテンを食べていた器を思い出します(いつも発想が小市民的)。
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そしてついに、ブラック・ライトを購入しました。このライト自体は、現在偽札を確認するアイテムとして、安価なものが簡単に購入出来ます。携帯に便利なペン型等の、もっと小型のもありますが、撮影にはこの位が必要だと思ったようです。さて結果はいかに?
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睨んだ通り、CとDがウラン・ガラスでした! 青く見える光はブラック・ライトそのもの反射した色で、緑色のみがウランによる発光です。ちょっと調べたところ、これはイギリスの「Bagley」と言うメーカーの、実際アール・デコ時代の製品で、「Carnival」と言う名前で結構出回っていたデザインのようです。だから、英国内での価値はそれ程高くありません。
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ブラック・ライトの無い時代には、これらの器を窓辺に置いて、紫外線の強い晴れた日の明け方や黄昏時に、不思議な発光を楽しんだそうです。AとBは、ウラン・ガラスじゃありませんでしたが、古いガラス器としては、返ってCとDよりも美しいデザインで気に入っています。
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ついでに、多分私が初めてイギリスのフリマを訪れた際に手に入れた、いかにもアール・デコっぽいデザインのガラス製のボタンにも、紫外線を当ててみました。
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おおっ、光った。小さなボタンのほうは、自然光での見た目は似ている色なのに、発光しませんでした。やはり肉眼で見極めるのは、まだまだ難しいようです。でも、最初からアンティーク・モール等で「ウラン・ガラス」と謳っているものを購入するより、フリマで「これはもしかして…」というのを買ったほうが、ずっとワクワクして楽しいと思いました(値段はたかが知れているし)。
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ところで、ウランが入っているなんて、放射線障害とか大丈夫なの??と心配する人がいるかも知れませんが、極微量なので、人体に悪影響を与える恐れはないと言われています。ガラス棚にウラン・ガラス製品を大量に並べて長年暮らしているコレクターも居ますが、少なくとも彼らが健康を害したと言う話は聞いたことがありません。確認する為のブラック・ライトのほうが、長時間直視し続けると眼を傷める為、返って取り扱いに注意が必要です。ただし、確かにウラン・ガラスの製造には、被爆する危険を伴うので、現在はほとんど生産されておらず、その為アンティークやビンテージとして価値が上がる訳です。しかしイギリスのフリマでは、運が良ければ安価で入手出来ることが分かり、夫婦揃って当分ウラン・ガラスにのめり込みそう。でも器は場所を取るので、出来ればジュエリーかボタンで出会えると嬉しい私です。
  
by piyoyonyon | 2015-10-08 15:32 | テーブル&キッチンウェア


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


by piyoyonyon

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