英国で最も不気味な城、ファーリー・ハンガーフォード城

EH(イングリッシュ・ヘリテイジ)の年会員の期限が、いよいよ押し迫った8月の晴れた週末に、今のうちにEHのどれかに行かなければ~と益々結構焦りましたが、実は身近な有料の興味を引くEHの場所は、ほとんど既に訪れてしまっていました。そこで、ちょっと日帰りで行くには遠いのだけど、前から興味津々だったサマーセット(ウィルトシャーとの州境)の「Farleigh Hungerford Castle ファーリー・ハンガーフォード城」を訪れることにしました。このお城は、EHの会報誌に「EHで最も不気味な城」と紹介され、またTVでも何度か「血生臭い因縁の城」として登場し、一度是非見てみたいと思っていたのです。
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城とは言え、今はほとんど礎石しか残っていない完全な廃墟です。まず駐車場が、城門を潜り遺跡の中を通った先にあるのに、ちょっと驚きました。EHでは、NT(ナショナルトラスト)と違い、「ほんとに文化遺産守られているか?」と思えるような、意外な場所に駐車場の設置されていることがあります。
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案内板の、全盛期の17世紀の城の様子。EHでは、大抵入り口でチケットを購入する際、ガイドブック(有料)か音声ガイド(無料)を勧められます。でも大抵は案内板の説明が充実しているので、それで十分です。しかしここの案内板は、すっかり紫外線で劣化しており、非常に読み辛かった…。
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城は、農村地帯の民家が点在する丘の上にあります。と言っても、周囲にも同じ位の高さの丘が並び、特に眺望が良いようには見えません。北と東側はフロム川に沿った天然の急な崖、西側には人工の深い堀が設けられています。堀には、かつては水が張られてたようです。
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現在内城の建物として残っているのは、南西と南東の塔のみ。これは南西のほうで、御覧の通り裏側はありません。
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しかし、城付属の礼拝堂(正式名:聖レオナルド礼拝堂)は、今でも完璧な状態で残っています。
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右手は、礼拝堂の裏にある元司祭館。今は資料室になっています。
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資料室内に展示されている、城を再現した模型。左が多角形の外城と礼拝堂、右が四角い内城部分です。内城の四方には、このように塔が立っていた訳です。
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そして、現在の城の航空写真。上が南方向で、下が北方向になります。
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礼拝堂の中に入ってみます。イギリスの教会建築に良くある、屋根だけ木製のタイプ。
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左手の聖アンナ礼拝堂と呼ばれる小部屋には、城主一家の豪華な石棺が並び圧巻です。中央は、大理石の彫像が付いたのもの。壁画やステンドグラスも手が込んでいます。
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こちらは、寄り古い時代の砂岩の石棺。男性像の足元には、犬の彫刻があります。
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天井の梁には、実はびっしり天使が描かれています。
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祭壇右脇の古めかしい壁画は、ドラゴンと戦うイングランドの守護聖人、聖ゲオルグ(ジョージ)を描いているようです。右下も、多分石棺。
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そして、礼拝堂を一度出て左手に進むと、crypt 地下墓所(半地下ですが)があり、17世紀の城主一家のデス・マスク付きの鉛製の棺が並んでいます。ここは薄暗くカビ臭ささが漂い、ちょっとドキドキします。礼拝堂内の石棺に比べると質素に見えますが、当時鉛の棺は大変高級で、特権階級の象徴だったそうです。とは言え、棺桶にデス・マスクまで付ける発想が理解不能。棺の小ささが、当時の人々の体格を物語っています。右奥の二つのバイオリン・ケース大のものは、幼児の棺のようです。
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そしていよいよ、橋を渡って内城の遺跡に入ります。
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内城と外城を繋ぐ橋の下には、かなり深い堀が作られています。
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南西塔と共に、唯一城館らしさを伝える南東塔。
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南東塔の手前の一段窪んだ長方形の土地は、昔は庭園だったようです。
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ファーリー・ハンガーフォード城は、14世紀に庶民院議長だったトーマス・ハンガーフォード卿に寄って、既に存在していた荘園主館を元に建てられました。その後代々ハンガーフォード家に受け継がれ、15世紀には城らしく大きく拡張され、17世紀には当時流行のお洒落なエリザベサン様式に改装されました。因みに家名は、バークシャーの町ハンガーフォードに縁があるからだそうです。
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不気味な城と呼ばれる所以は、16世紀に城主エドワードの三番目の妻のアグネスが、当時寡だった城主の次の妻の座を狙って、自分の前夫を殺し、この城の竃でその遺体を焼いたから。アグネスは企み通り城主と結婚しますが、彼女の犯罪はエドワードの死後露見し、加担した二人の家来と共に処刑されました。
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城は、エドワードの前妻との息子ウォルターに引き継がれましたが、彼は政治的に邪魔になった妻のエリザベスを城の塔に幽閉し、度々食事に毒を盛って抹殺しようとまでしました。しかし、それを察知していた妻は、密かに村民が運び入れる食事のみ口にし、毒殺を逃れたそうです。その後ウォルターのほうは、天罰覿面とでも言うべきか、属していたクロムウェルの失脚と共に、反逆罪と同性愛と妖術の罪で処刑されます。城は裁判所に没収されましたが、エリザベスは無事解放され再婚しました。
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これが南西の塔の内側。非常に壁が厚く、上に行くに従って多少薄くなっているのが分かります。当時は五階構造だったようです。この塔にエリザベスが幽閉されていたと長年信じられていた為、今では「貴婦人の塔」と呼ばれている訳ですが、実際に彼女が幽閉されていたのは、今は残っていない北西の塔だったようです。どちらにせよ、領民から慕われる中々賢い城主夫人だったのでは?と、勝手に想像しています。
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一度裁判所に没収されたこの城は、再びハンガーフォード家に買い戻されますが、17世紀後半から一族は没落し始め、18世紀についに城は手放されます。その後裕福な一家の所有になりますが、彼等は近辺に新しく建設する館の石材としてこの城を購入しました。つまりこの廃墟は、自然に朽ち果てて出来た訳ではなく、リサイクルの為に人の手によって破壊されたものなのです! その為、イギリスの城には珍しく、内城よりも外城の保存状態のほうが良いそうです。
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北東の塔の礎石。かろうじて、塔が円柱形だったことだけは実感出来ます。
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こちらは、実際エリザベスが幽閉されていたらしい北西塔の、かつて立っていた部分。確かにこちらの立地のほうが、村人が密かに食料を届け入れるのには好都合なように思えます。
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この井戸の周囲が当時の厨房で、例の遺体を焼いた竃があったのは、どうやらこの辺のようです。
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この城の北側に、とても可愛い茅葺屋根の田舎家があります。ただ太陽の位置の低い冬期は、日当たりが凄く悪そうです。その脇には細長い池があり、もしかしたら、城の堀の名残かも知れません。
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快晴の汗ばむ日だったので、見学後はお決まりのアイスクリーム・タイムとなりました~。幸運なことに、地元製造のアイスが売られていました。左はP太の選んだ「サマーセット産の苺とクロテッド・クリーム」。右は私のチョイスで「ラズベリーとエルダーフラワー(西洋ニワトコの花)のシャーベット」。苺のはちょっと甘過ぎて、私のラズベリーのほうが美味しかったけど、全くシャーベットではなくアイスクリームでしたね。
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さて、ファーリー・ハンガーフォード城が本当に「不気味な城」かと言うと、結論としては、普通は廃墟と言えば不気味なものですが、この城の場合、壁すらほとんどない礎石だけで、まして陽が燦々と差すこんなお天気の日では、地下墓所以外は、全く不気味には感じられませんでしたあ。それにイギリスには、「幽霊の出る城」「血塗られた歴史の城」なら、他にも幾らでも(掃いて捨てる程)あります。しかし、歴史的に興味深いことは確かで、ちょっと独特な立地と好みの廃墟っぷりで、夫婦揃って非常に楽しめ、気が付けばここで3時間位過ごしていました。何より、完璧な状態で残っている付属礼拝堂と、廃城との対比が印象的でした。
   




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by piyoyonyon | 2016-09-03 15:34 | 旅行・お散歩 | Comments(0)


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


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