観賞用廃墟?ベイハム・オールド・アビー

8月最後の週末は、いよいよEH(イングリッシュ・ヘリテイジ)を入場料無しで訪問出来る最後のチャンスでした。しかし、学校の夏休みの終盤でもあり、全ての高速道路が再び大渋滞の予想だったので、高速を通らなくても行ける、イースト・サセックスの「Bayham Old Abbey ベイハム・オールド・アビー」を目的地に選びました。ここを後回しにしたのは、かつて入場口の外側から、眺めたことはあったからです。当時はそれで十分だと思っていましたが、年会員証でタダで入場出来るのなら、この機会を逃す手はありません。
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御覧の通り、修道院の遺跡です。16世紀に国王ヘンリー八世が解散法で多くの修道院を閉鎖した為、イギリスにはこんな修道院の廃墟が沢山あります。
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ここの第一印象は、「まるでチャンネル4(と言うイギリスの民放TV局)のアイデントのようだ」でした。我ながら発想が俗っぽくて浅ましいと思いましたが(笑)、実は何も恥じることはありませんでしたあ。何故って、その映像は、本当にここで撮影されたものを元に、CG加工されているそうだからです。
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普通EHの説明板は、イラスト付きで分かり易く充実しているのですが、ここでは部屋の名称を示すサインしかありませんでした。入り口受付けで、音声ガイドを借りるべきだったかと反省。年会員になった当初は、良く音声ガイドを利用していたのですが、結構説明が長くて自分のペースで回れない為、夫婦揃ってウザくなって止めてしまったのです。
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ベイハム・アビーは、13世紀初頭にプレモントレ修道会の大修道院(=アビー)として建てられ、15世紀には拡張され、16世紀の解散法で廃院になるまで機能していました。今でも結構辺鄙な場所ですが、修道士達は俗世から離れた環境を望んでいた為、こんな土地を好んで選んだようです。とは言え、近くに川が流れ、水の便は良かったので、修道生活にとっては理想的な立地だったそうです。
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修道院解散後は、しばらく王家が土地を所有していましたが、エリザベス一世に寄り売却されました。18世紀前半には、ジョン・プラット卿(後のベイハム子爵)の手に渡ります。当時はゴシック・リバイバルの時代で、裕福層の中には、わざわざ庭園の中に「ニセ廃墟」を建設する者も居る程、廃墟が流行していました。プラット卿も、このベイハム・アビーを、最高のガーデン・アクセサリーと見なして購入したようです。
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レイコック寺院やダウントン・アビー(ありゃドラマの中だけだけど)のように、元修道院を邸宅に改装する例もありますが、プラット卿の場合は、邸宅は遺跡の脇に別に建設し、廃墟にはサマーハウスやオランジェリー等を増築したり、一層絵になる廃墟らしく手を加えました。
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プラット卿の命を受け、この遺跡を庭園としてデザインしたのは、ロンドンのケンウッド・ハウスも手掛けた、高名な景観庭園師ハンフリー・レプトン。
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その後19世紀後半に、プラット家の子孫のカムデン一家が、ここを見下ろす丘の上に建設したお屋敷に移り住み、この修道院跡と旧邸宅は1961年にEHに寄付されました。
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これが、かつての聖堂のnave=身廊部分。
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側面の窓のアーチの大きさから、かなり大規模な建物だったことが想像出来ます。
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この辺りは、身廊と翼廊が交わるクロッシング部分。
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あちこちの壁や柱に、ガーゴイルと思われる、実物大の人間?の頭像が嵌め込まれていて、一瞬ドキッとします。脆い砂岩の為に崩れて、一層不気味です。
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そもそも、突然顔だけっていうのが悪趣味。その昔ケルト民族が、敵兵の生首を柱に埋める風習があったと言うのを、嫌でも思い出さずには居られません。
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翼廊の端には、小さな螺旋階段が。昔は塔に続いていたのだと想像します。
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身廊の最奥は主祭壇部分。今はすっかり大木に侵略されています。
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分厚い石の壁に食い込んだ、木の根の破壊力が圧巻。これを見て、私もP太も同時に「ラピュタみたいだ!」と言いました。
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身廊脇(側廊か礼拝堂跡)に、ひっそりと佇む二つの小さな墓石。19世紀の館主の息子達の墓だそうです。どちらも、生まれた当日に亡くなっています。
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柵の向こうに、現在の村の教区教会が見えます。
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修道僧達の食堂の竃跡と思われます。素焼きのタイルが丹念に重ねられています。
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ベイハム・アビーは、サセックスとケントの州境にあります。この14世紀築のケント側の楼門は、「Kentish Gate ケント門」と呼ばれています。左側の出っ張った部分は、19世紀にサマーハウスが増築された跡。対するサセックス側の「サセックス門」も存在したはずですが、今は残っていません。
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こちらは、遺跡の脇に立つ、18世紀築のジョージアン様式のプラット卿のお屋敷。
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屋敷は、南側の一部がEHの受け付けと売店として利用され、また北側の図書室とダイニングの二部屋だけが、近年改装され一般公開されています。と言っても、家具もほとんどなくガランとした状態。
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そしてこれが、どうやら現在の子爵家のお屋敷のようです。こんなドラマのような現役の屋敷が、結構イギリスのあちこちに存在するんですよ~。
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結局、好みの廃墟…のはずなのに、景観庭園のオブジェとして後年手が加えられた遺跡の為、正直言って少しだけ興醒め。何だか、本当にCG処理されたような、妙にウソ臭い感じがあちこち漂いました(笑)。そんな中、遺跡の中に設けられた簡素な新生児の墓は、真実のモニュメントとして一番印象的でした。
 




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by piyoyonyon | 2016-09-20 15:28 | 旅行・お散歩 | Comments(0)


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


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