イギリスの古墳コールドラム・ロング・バロウ

冬のイギリスでは非常に貴重な、抜群に快晴の週末があり、何処かに出掛けたいと願いました。でも近場の目ぼしい所は既にほとんど回っちゃったし…とウンウン考えて、前日に偶然ネットで見付けたのが、ケントの州都Maidstone メイドストーン近くにある、「Coldrum コールドラム」と言う遺跡でした。ケント州で最も保存状態が良いと言われる新石器時代の巨石文明遺跡で、「long barrow=長墳」と呼ばれる古代の墳丘墓です。こんなに私にピッタリな場所が、実は割と身近にあったなんて!と、結構ワクワクしました。NT(ナショナルトラスト)管理ですが、入場無料の多くはガイドブックに掲載されていない為、今まで知りませんでした。
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最寄の市町村は「Trotisscliffe トロティスクリフ」と言い、ヨロズヤの一軒もないような(でもパブはある)小さな村。中心から、しばらく細く折れ曲がった農道を進みます。3、4台しか止められませんが、一軒の農場の脇に、NTの専用駐車場があります。
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駐車場のある入り口から長墳まで、10分位歩きます。イギリスらしく、遊歩道は完備されています。
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途中、野イバラのヒップなど、赤い実を色々見掛けました。
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5、6分歩いた森の中の遊歩道を抜けると、突然視界が開けます。
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コールドラムは、ノースダウンズ丘陵地帯の丁度麓にあるのです。この丘の尾根には、カンタベリーとウィンチェスターの二つの重要な大聖堂都市を繋ぐ、中世から続く「Pilgrim's Way 巡礼者の道」も通っています。
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コールドラムの魅力は、保存状態の良い遺跡そのものだけでなく、そのドラマティックな立地だと言われています。日本の古墳も、風水に乗っ取り、最高の立地を選び建設したのではと言われていますが、イギリスの古墳も、古代人の研ぎ澄まされた感性で選び抜かれた、大抵風光明媚な眺望の良い場所に建設されたようです。どちらにせよ、死者や死後の世界に対する畏敬の念が感じられます。
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牧草地に出てから少し右に折れると、やっと木々に囲まれた遺跡そのものが見えて来ます。遊歩道より一段高い場所に築かれており、階段か坂道を少し登ります。
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頂上に到着しました。実は子供の頃から、古墳キチ★イだった私。日本の古墳時代と言うと、紀元3世紀から7世紀を指しますが、この長墳は、それより遥かに古い紀元前4000年頃に築かれました。かの有名なストーン・ヘンジよりも、更に1000年程古い時代に築造されたと言われているのだから、胸がときめきます(…ヘンタイ?)。その上、日本の天皇陵等の大規模で歴史上重要な古墳の多くは、宮内庁管轄に指定されており、一般人の入場が厳しく禁止されていますが、ここのは誰でも気軽に近付くことが許されています。
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盛り土は失われ、石室入り口が露出した、言わば石舞台古墳状態です。
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このメイドストーンの近くのRiver Medway メッドウェイ川流域には、「Kit’s Coty House」や「Countless Stones (Little Kit’s Coty House)」と呼ばれる新石器時代の古墳(の残骸)が幾つかありますが、やはりどれも石室が剥き出しの状態です。中世の暗黒時代に、異教の遺物だと言う理由で破壊されたとか。ついでに巨石を、建築物等にちゃっかり再利用したそうです。
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これらの巨石は、sarsen サーセンと呼ばれる砂岩の一種。氷河期の名残りと言われ、欧州最大のストーン・サークル「エイヴベリー」でも使用されている、イギリスでは良く見られる岩石です。普通砂岩は脆いのですが、サーセンは石英の粒を含み、かなり強固です。
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こちらは、かつて古墳の側面を覆っていた石。コールドラムは、「長墳」と言えど他の一般的な長墳に比べ、かなり短い形状な為、長い間ストーン・サークルだと誤解されていました。
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石室入り口は、こんな風に結構急な崖の上に築かれています。
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新石器時代の古墳の入り口は、どれも東を向いているそうです。
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古代遺跡の見学に限って言えば、冬が最適。夏は、定期的に草刈りはされていても、それ以上に植物の成長が早く、部分的に隠れて良く見えなかったり、藪が深くて思い通りに近付けなかったりして不便です。それに、冬の低い日差しのほうが、遺跡の撮影には向いています。
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これが、埋葬当時の想像図なんですが、…崖は何処に? 中世から盗掘が繰り返された為、副葬品の多くは失われていましたが、20世紀初頭の発掘調査で、子供を含む男女22体が埋葬されていたそうです。多分後のDNAの鑑定結果から、同じ一族の2百年以上に渡る埋葬地だったと言われています。遺体は、一定期間他の場所で放置され、白骨状態になってから埋葬されたとか、内臓を取り除き、手足を切断する(スペース有効利用の為??)など、「excarnation」 と言う死体処理方法の一部が取られたと考えられています。
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古墳の脇に立つこの大木には、リボンが沢山結び付けられています。イギリスのスピリチュアル・スポットに多い、「wishing tree 願いの木」と言うもので、ちょっと日本のおみくじの木に似ています。
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その木の根元には、不気味に焼け焦げたギターが。遺跡周辺で焚き火の痕も度々見掛けるイギリスですが(おいおい)、文化財の近くで無断で火を使用するのは止めましょう。
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古墳の巨石の上には、更に藁細工のお供え物(念の為藁人形ではないよ)が置いてありました。どちらにせよ、キリスト教とは無関係の、原始宗教的、自然崇拝的、またはヒッピー的とかペイガン的と言えます。
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ハロウィーンの後だったせいか、何故かカボチャのお供えも。色の近いコマドリと仲良し。
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「Coldrum」と言う地名は、ケルト系のコーンウォール語の「魔法の地」を意味する「Galdrum」から来ていると言われています。名付けられたのは、多分建造よりずっと後の時代だと思いますが、そう呼びたくなるのも頷ける、否応無しに神秘的で特別な場所に感じられるコールドラムです。
  




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by piyoyonyon | 2017-01-23 15:25 | 旅行・お散歩 | Comments(0)


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


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