もう一つの中世の壁画教会

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ネットで何かを調べている内に、英国最古級の壁画を持つHardham ハードハム村のサクソン教会の近くに、同じ位古い壁画を持つ教会が、もう一つ存在する事を偶然知りました。居ても立ってもいられないくなり(忍耐ない)、早速連れて行って貰うことにしました。
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その教会は、「West Chiltington ウェスト・チルティントン」と言う村にあり、ハードハムの西4~5km位に所在します。うちからはそう遠くありませんが、幹線道路がB(県道クラス)道さえ一つも通っていない村の為、今まで一度も通過した事がないどころか、名前を聞いた事すらありませんでした。想像した通り、不便な場所の為に返って現代の開発から間逃れた、昔らしい雰囲気が良く残る村に見えます。この辺りは、「ウィ-ルド(丘陵森林地帯)の手付かずの様子を一番残す場所」とも表現されるそうです。
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教会の正式名は、「St. Mary Church 聖マリア教会」と言います。
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南側から眺めたところ。緑の丘(って言っても墓地ですけど)の頂上に立つ、いかにも牧歌的な可愛い教会に見えますが、情報がなければ、そんな特殊な内部を持つ教会とは全く気付かず、外観は在り来たりな村の教会にしか見えません。
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建立は1088年ですが、それ以前のサクソン時代にも、確証はないものの、多分同じ場所に教会が立っていたのではないかと伝えられています。サセックスでも三番目に古い教会建築で、イングリッシュ・ヘイリテイジに寄り、歴史的建造物第一級に指定されています。
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西側に、教会付属としては結構広い墓地があります。やっぱり沢山の墓石が倒れているっスね…。
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こちらの平面でシンプルな墓石は、現代のイギリスの最も一般的なスタイル。火葬後に散骨(と言うより散灰)する為、その下に遺体や遺灰は埋葬されていないから、正確には墓石ではなく記念碑だそうです。
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尖塔かつ鐘楼は木造。
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教会の手前には、「stocks 足枷」と「whipping post 鞭打ち柱」と呼ばれる昔の刑具が。足枷は、この板の穴に罪人の両脚を固定して(定員二名)一定期間晒し者にし、その間見物人は、好きなだけ腐った果物や野菜を罪人に投げ付けて良いと言う晒し台です。もう一つの鞭打ち柱では、文字通りここに罪人を縛り付け、鞭打ち刑にしました。どちらも17世紀の物で、イギリスの大抵の村に存在したようです。
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教会の内部は、身廊=北西、内陣=北東、南側廊=南西、そして礼拝堂=南東と、概ね四つのブロックに分かれています。
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礼拝堂だけが14世紀の増築で、後はほとんど12世紀(11世紀のオリジナルではない)の建造物です。
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まず、ハードハムの教会の内部より、窓が大きく取られて陽が燦燦と差し込んで明るく、壁画が寄りはっきり残って見えるのが印象的でした。
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壁画の彩色は、今では褪せてほぼ赤系のみに見えますが、制作当時は、恐らく色の氾濫のように華やかだったであろうと言われています。もしかしたら正教会のようだったのかも、と想像します。
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身廊の北側の壁には、「Annunciation 受胎告知」の場面。教会自体の起源は、ハードハムのサクソン教会より遅くノルマン時代ですが、内部の壁画は、ハードハムと同じく12世紀に制作されたと言われています。保存状態が良いのは、やはり長年漆喰の下に塗り込められていたからだそうです。
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身廊と南側廊の間のアーチ上には「Calvary カルヴァリー」、すなわち処刑場ゴルゴタの丘へ向かうキリスト受難の場面。
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左から右へ向かって物語が進み、これらは最後の三つの場面で、中央はキリストの磔刑、右端は良く見えませんが、埋葬か復活を描いているのではないかと思います。
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アーチの下にも、それぞれ異なる文様が描かれています。
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一箇所に二種類の文様が交わって見えるのは、後の時代に下地を塗って上描きした、つまり時代の異なる文様が二重になっているからのようです。
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アーチを支える柱頭の装飾も、それぞれ異なっていて興味深いのです。
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壁画は12世紀に制作され始めましたが、二百年掛けて14世紀に完成したと言われています。そのせいか、幾つかの後期らしき絵は、明らかに画力的に進化して見えます。この「車輪の上のキリスト像」もそうで、デッサン力が確実に向上しています。
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例えばこちらは、初期の制作と思われる壁画。
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こちらは後期らしい、内陣近くの楽人天使。ルネッサンス期の絵画に近付いて見えます。
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洗礼者ヨハネかと思ったら、キリストを背負って川を渡ったと言われる聖クリストフォロスだそうです。
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壁画は、かつては床すれすれまでびっしり描かれ、壁面全てを覆っていたようです。
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ありとあらゆる意外な場所に壁画が残っており、隈なく観察しなければなりません。
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南側廊と礼拝堂の間のアーチ上には、ケルトっぽい文様が。
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そのアーチの下にも聖人像。
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やっぱりこの教会にも、不思議な壁の窪みがあります。今は、子供達の遊戯スペースになっていますが。
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その上の梁部分にも天使の壁画。スペースを生かした構図の、中々躍動感のある絵です。
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壁画の次に特筆すべきこの教会の特徴は、「hagioscope ハギオスコープ」と呼ばれる、内陣から南側廊へ続く長~い壁のトンネル。「ハギオスコープ」は、日本語では「祭壇遥拝窓」と訳されますが(益々訳分かんないですよね…)、内陣が見えにくい側廊や翼廊等からでも、礼拝中に祭壇が見えるよう設けられた壁の覗き穴だそうです。ここのは2.7mと異様に長く、本当に祭壇が見えるのに役立つかは謎です。
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クリスマス時期じゃなかったけど、ハギオスコープの前にはニット製のnativity(キリスト降誕のシーン)が。手編みの毛糸のnativity人形は、イギリスでは一般的だそうです。
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ハギオスコープの上部が、丁度鐘楼部分になっています。このワイヤーは、鐘を鳴らす為の装置。
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東側の内陣と礼拝堂には、壁画はほとんど残っていません。
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祭壇の、この教会唯一のステンドグラス。
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期待した通り、小さいながら非常に見所の多い教会でした。もし興味を持たれたら、是非ハードハム村の聖ボトルフ教会と両方御覧になることをお勧めします。





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by piyoyonyon | 2017-04-24 15:30 | 旅行・お散歩 | Comments(0)


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