谷間の愛らしい村ウェスト・ウィコム

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ノーサンプシャーの「Brackley ブラックリー」のアンティーク・モールを訪れた後は、町自体を散策する予定でした。古いマーケット・タウンで、歴史的な建物が並ぶ…と聞いていたのですが、実は在るのは一般立ち入り禁止の幾つかのお金持ち学校ばかりで、町行く人も少ない、何だかとても眠~くなる町でした。賑やかだったのは、結局アンティーク・モールだけ(笑)。特に、中心に立つ町のアイコン的な建物タウン・ホールが、まるっと改装中で、足場とビニール・シートで覆われていたのが、この町の印象を数段つまらなくしたと思います。となれば、もうこの町に居る理由はないのですが、帰途に着くには未だ早過ぎました。そこで、別な町へ移動しようと言う事になり、候補は「マザー・グースの歌」にも登場する近くの「Banbury バンベリー」か、帰路の途中の「West Wycombe ウェスト・ウィコム」でしたが、結局ウェスト・ウィコムを選びました。
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ここは、村全体の大部分が、ナショナルトラストの指定になっており、高速道路の出口からも割と近いので、いつか訪れたいと思っていました。
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高速を降り、しばらく森や丘陵地帯を通って村に近付くと、満開の桜並木がお出迎え。その上、小高い丘の頂上には、何だか迫力ある不思議な建物が目に入って来ます。…これは面白そうで期待出来そうな村です。
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村名は、「High Wycombe ハイ・ウィコム」と言う大き目の町の、西に位置する為に名付けられました。「ウィコム」は、Wye ワイ川(イギリスに幾つか存在する川の名前)沿いの谷間を意味するそうです。その名の通り、谷に沿った目抜き通りに、古い家並みが寄り添う小さな村です。
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16世紀からの、様々な様式の建物が集まっているそうです。
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こちらのパブ「The Swan 白鳥亭」は、歴史的建造物2級指定。
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何故かこの村には、ドアや窓枠を緑色にペイントした家が多くありました。
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昔ながらのイギリスらしい店構えの駄菓子屋さん。看板の書体も、イギリスらしい物です。
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村の中でも、一際目立つ木組みの家。屋外の公共場の時計が正確なのは、イギリスでは非常に珍しい!
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この建物の下を潜ると、「Church Lane 教会の小路」と呼ばれる公道が続いています。どうやら、丘の上の教会に通じているようです。
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到着した時には既に夕方の5時近くでしたが、人気の観光地らしく、丘を散策している人が未だやたら沢山います。我々も、丘の上の建物を目指すことにしました。
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こんな小高い丘が村のすぐ側に存在すること自体、イギリス南部では結構珍しいかも知れません。
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この見るからに印象的な丘は、太古から人々の関心を集めていたようで、青銅器時代の居住地跡や、ストーンヘンジに似た祭殿跡があったと言われています。その後、ローマ時代にも神殿が建てられていたと信じられ、またアングロ・サクソン時代からは、丘の中腹に「Haveringdon」と呼ばれる村が存在したそうですが、14世紀の黒死病(ペスト)の猛威に寄り、ほぼ消滅したそうです。
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この丘は、red kite=赤鳶を観察するのに絶好なスポットとしても、知られているそうです。確かに、何羽かの赤鳶が上空を飛び回っていました。とても大きな鳥なので、羽を広げて飛ぶ姿には圧倒されます。これじゃあ、ウサギや野ネズミ等の小動物は、ここには住めないだろうなあ…。
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丘の頂上の謎の建物に到着。全体的には八角形をしています。…ん?外壁だけで、中は吹き抜けです。
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コリント柱のあるジョージアン様式で、壁にはフリントと言う石が埋め込まれています。
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上部には、中々凝ったレリーフ装飾が。
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内部には入れませんが、鉄格子越しに中を除いて見ると、壁には墓標が幾つかはめ込まれてあり、巨大なmausoleum=霊廟であることが分かりました。すぐにP太は、「地元のお金持ちが自分の一族の為に建てたんだろう」と言いましたが、幾ら資産家とは言え、こんな大それた物を個人で建てるのか?? 日本の藩主の霊廟を遥かに超える規模だぞ、と私には信じ難く思われました。
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しかし、「きっと自分の屋敷から見える場所に、この霊廟を建てたはずだ」とP太が言う通り、谷の反対側の丘の斜面にはお屋敷が見えました。この館、「West Wycombe House ウェスト・ウィコム・ハウス」と言い、「ダウントン・アビー」を始めとするTVドラマや、「ある公爵夫人の生涯」等の映画の撮影にも度々使用されているそうです。噴水等の水場を生かした庭園が見所の、「ウェスト・ウィコム・パーク」と呼ばれる広大な敷地の中にあります。霊廟も屋敷も、18世紀の政治家で第11代ル・ディスペンサー男爵Francis Dashwood フランシス・ダッシュウッドが建てたもので、屋敷の一部には今でも子孫が住んでいるとか。今はナショナルトラスト管理下なので、夏に機会があれば(冬季は閉鎖中)、訪れてみたいと思います。
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フランシス・ダッシュウッドは、金に任せて放蕩の限りを尽くした根っからの道楽者で、古代ギリシャやローマの芸術を研究する「ディレッタンティ協会」、また「地獄の火クラブ」と言う秘密組織の創始者&主催者でもありました。地獄の火クラブは、修道院の廃墟を改造した秘密基地で、黒ミサ紛いの行為も行う怪しい組織でしたが、実際には名前ほど邪悪ではなく、単なる貴族のおふざけに過ぎなかったそうです。とは言え、羽目をはずした乱交パーティーだったのには違いなく、ダッシュウッドはそれまでの不摂生が祟ったのか、晩年はすっかり健康を害してしまったそうです。
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丘の上からは、先程村に入る際に通って来た桜並木を見下ろすことが出来ました。
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霊廟の少し先に、教会があります。やはり18世紀にフランシス・ダッシュウッドに寄り建てられたもので、正式名を「Church of St. Lawrence 聖ローレンス(ラウレンティウス)教会」と言います。古代には、原始宗教の祭壇が立っていた場所だと信じられています。麓の村の端にあるSt. Paul's Church聖パウロ教会が「冬の教会」と呼ばれているのに対し、こちらは「夏の教会」とも呼ばれているそうです。1920年代に聖ローレンス教会に自動車道が通じるまでは、冬季はこの丘を登って教会に通うのが不便過ぎた為のようです。
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尖塔の先に金色のボールが付いた、ちょっと独特な建築様式。歴史的建造物一級に指定されています。残念ながら、入り口のドアには鍵が掛かっていて、内部は見学出来ませんでした。
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何故か墓石の写真を熱心に撮っている男性が居る…と思ったら、猫の石像が付いたお墓でした。この猫は、ガーデン・アクセサリーとして普通に売られている物だと思いますが、墓に使うとはちょっとしたアイディアですね。私も真似して写真を撮っていたら、他の観光客のおばあさんに笑われてしまいました。念の為、被葬者は猫ではなく、生後11ヶ月の乳児のようです。1931年に亡くなったことを考えれば、この乳児の親が存命しているとは思えませんが、今でも良く手入れされている様子を見ると、きょうだいかその子孫が、今も欠かさずお参りしているのかも知れません。
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霊廟の裏側は、装飾が簡素化されていました。この霊廟、夜はライトアップされているようです。去り際に車のバックミラー越しに少しだけ眺めましたが、丘の上に浮かび上がる巨大な建物は、かなり迫力。
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この丘からは、ハイ・ウィコムに続く真っ直ぐな道路が見えます。
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丘の中腹には、通称「ウェスト・ウィコム洞窟」、正式名「Hellfire Cave 地獄の火洞窟」があります。やはり18世紀にフランシス・ダッシュウッドに寄って作られた人工洞窟で、こいつの余りに馬鹿げた金の使い方に、腹立たなくもありませんが(笑)、今はこうして村の観光資源に貢献している訳ですし、概して文化って、そういう享楽の時代に発達する物かも知れません。
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村自体は、正に記念日に訪れるのにピッタリな、本当に素敵な雰囲気で気に入りました。もっと暖かい季節に、また来てみたいと思います。しかし桜並木は、この季節だけの御褒美でした。
  




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by piyoyonyon | 2017-04-10 15:35 | 旅行・お散歩 | Comments(2)
Commented by 真木 at 2017-04-11 09:58 x
ぴよよんさん、こんにちは!
ようやく桜が満開になったかと思えば雨雨雨の東京です。(涙)
今年はやはり、気候がおかしいと思います。。。

>こいつの余りに馬鹿げた金の使い方に、腹立たなくもありませんが(笑)、

あはは、これ、ドツボに入りました!笑
そう!時々、他人事ながら無性に腹が立つ無駄遣いって
ありますよねぇ?(^^;
私的には巨大な霊廟としか感じられないバロック様式の
屋敷や、光熱費や暖房効率という言葉を知らない大ホール
を見るとむかむかします。笑
その家の一族や、浪費をした王の国民とかには気の毒ですが
過ぎてしまえばその濫費が文化資源になるというパラドックス。
ルートヴィヒ2世しかり、ルイ14世しかり・・・。
現代でも政府は国民のお金を無駄遣いすることに喜びを
感じているとしか思えません。しかも悪いことに、文化的
資源など何もなく、醜悪な建築物や無駄な施設だらけ。
最悪ですね・・・。
Commented by piyoyonyon at 2017-04-12 05:36
真木さん、こんにちは! こちらは逆にお天気続きで、
私は帰国前のガーデン・ラッシュです。
今、ブルーベルとライラックと藤が咲き出しています。
本来イギリスの四月はにわか雨の月なのに、
返って雨が足りなくて、
本当に近年の天気・気候は例外ばかりで読めないですね。

私も、豪華過ぎる邸宅や城を見ると、
暖房効率とか維持費とか掃除が大変そうとか、
金持ちが絶対気にしないことを、つい考えてしまいます~(笑)。
だから廃墟のほうが好きなのかな(笑)。

一応この浪費家貴族は、
バカ洞窟の採掘に地元民を積極的に雇ったりと、
雇用にも貢献したらしいですよ。
まあ金は、下々にも隈なくばら撒いたと言うか。

ルードヴィッヒ2世、マイケル・ジャクソンと被りますね。
彼のネバーネバーランドは、ノイシュヴァンスタイン城…。


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