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愛と怠慢の館、アッティンガム 2

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我々夫婦+義母とのシュロプシャー旅行の途中、突然「Attingham Park アッティンガム・パーク」と言うNT(ナショナルトラスト)のお屋敷に立ち寄りました。豪華絢爛な主一家の居住部屋部分を見学した後、順路は地下に向かいます(正確には半地下)。
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屋敷の地下は、何処でも使用人のエリアと決まっています。屋敷の所有者一家及びその賓客を「上階」、使用人達を「下階」と呼ぶこともあります。この巨大なイギリスの地図が壁紙となった部屋は、壁上部に沢山のベルが並び、何処の部屋から呼び出されているか一目で分かる仕組みです。言わば、昔のインターフォン。
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使用人達の制服も、今見ると十分可愛い。厳格な階級社会のイギリスなので、彼等の仕事は長時間労働で厳しく、しばしば理不尽な上に概ね低賃金でした。しかし、三度の食事と真っ当な寝床ときちんとした服装は保障されていた分、20世紀以前の下層階者にとっては、破格に恵まれた労働環境だったそうです。
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ここは、使用人用の食堂です。こことて、この屋敷では日当たりが良く、結構居心地良さそうに見えます。
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面白いのは、このテーブルの上に乗った皿に、使用人の名前と仕事内容、給料がそれぞれ記されてる事。この食卓での最高給取りは御者頭で、最低の下級メイドのほぼ5倍です。現在のイギリスでも問題になっていますが、例え同じ仕事をした場合でも、女性は男性より必ず少ない賃金でした。
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「odd man=奇妙な男」なんて言う、奇妙な職種が混じっていました。一度退職した年老いた使用人、または働き始めの少年(丁稚?)の雑用係だったらしく、賃金は不明なものの、相当安かったようです。
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これ程銀食器が持て囃されて発達したのは、衛生設備の劣悪だった昔、銀は殺菌作用が強く、一番安全な食器だったからです。今でもイギリス人は、欧米の中でも特に銀器を愛する国民じゃないかと思います。
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一方、執事や家令、近侍等の使用人幹部達は、他の使用人達とは別に、こちらで食事を取ったようです。尚、日本語では「バトラー」も「スチュワード」もしばしば「執事」と訳され、格付けが曖昧ですが、少なくともこの館では、バトラーが最高位で使用人達を束ねていたようです。
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この部屋の、刺繍のテーブル・クロスが可愛いくて気になりました。
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こっちの、レースのテーブル・クロスも可愛い。
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上級使用人ともなると、他の使用人達とは給料や待遇が全くケタ違いで、執事クラスは専用の執務室兼私室も宛がわれていました。
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ピカピカの銅鍋がズラリと並んだ、見事な厨房。
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しかし、屋敷の規模を考えると、コンロの数が異様に少ないのです。この脇には巨大な暖炉とオーブンはあるので、主な料理はオーブン料理か煮込み頼りだったのかも。
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ここにも、見事なパイ細工が展示されています。
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日本のような精巧な蝋細工の食品サンプルなんて存在しないので、実際に小麦粉の生地で作成し、劣化しないようにバリバリに乾燥させた物と思われます。
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どちらにせよ、どんなに豪華な料理を作っても、どんなに急いで運んで給仕しても、主の食堂ホールがあんなに離れていちゃあ、料理は食事開始の頃には冷めていたのに違いありません。
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厨房にある、調理人達の賄い食卓。この規模が、現在の一般家庭のダイニングですね~。
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一方こちらは、「Still room」と呼ばれる、家政婦長直属のメイドの待機室。待機している間、香水やアロマ・オイル、アロマ・ウォーターやスピリッツ等を蒸留したり、お菓子やジャムやピクルス等を作ったり、またその貯蔵室でもありました。当時それらは貴重だった為、他の使用人に猫ババされないよう、家政婦長とその直属メイドで、厳重に管理されていたようです。私が台所を持つのであれば、この規模で十分でございます。棚や引き出しがいっぱいあって、中々使い易そうな部屋じゃありませんか。
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ウォルド・ガーデンなど庭園内や、ショップ等を楽しむ時間は全くありませんでしたが、本館内は閉館ギリギリまでたっぷり見学しました。室内装飾が見事に再現された主一家の居住区も勿論興味深かったのですが、この使用人達のスペースを見て、一層当時の生活が想像出来る、奥深い見学になりました。「ダウントン・アビー」もそうですが、豪邸ドラマは、やはり使用人達の人間模様も織り交ぜてこそ、面白いと思います。
 




by piyoyonyon | 2017-11-09 15:28 | 旅行・お散歩


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


by piyoyonyon

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