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本当に怖いイギリスの手術 後編

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大病院での腹部のアテローマ(粉瘤腫)の手術を受けた週明け、パッドを交換して傷口を消毒しなければならないだろうからと、近所のGP(家庭医)に予約を入れると、すぐに予約が取れました。医者に「具合はどう?」と聞かれたので、「悪くないです」と答えると、「そう、良かったわね。もう帰って良いわよ」と言われました。その間、凡そ1分。えええ? 術痕を診察さえしないんですか? パッド交換しないんですか?と聞くと、その黒人の若い女医さんは、「だって、病院から何も報告が来ていないのよ~」と言い訳にならない言い訳をしました。私は余程不安な顔をしていたらしく(あったりめえだ)、女医さんは「そんな顔しないで! 大丈夫よ。一週間経ったらパッドを外して良いわ。その後はシャワーも普通に浴びられるわよ」と言いました。
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それから更に三日位経って、手術を受けた病院から電話が掛かって来て、手術後の注意点の説明や、GPに行くように指示されましたが、何を今更と言う感じで呆れました。しかし術後は順調なようで、2日目位から既に鎮痛剤さえ要らなくなりました。きっと顔のアテローマの手術を受けた時のように、傷口も極力小さく、抜糸も必要ないように手術したのかも知れない、と感じました。その期間の入浴は、髪だけは朝シャンのように別途に服を着たままで洗い、その他は下半身浴で、パッドは濡らさないようラップで覆い、上半身は濡れタオルで拭いて過ごしていました。
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いよいよ手術から一週間が経って、ちゃんとお風呂に入れる~と思いパッドを外した時、私は自分の手術痕を見て、まず目を疑い、二度見して卒倒しそうになりました。しゅ、手術口が、糸で縫ってあるどころか、……腹に直径5cm位の穴が開いたまま。其処には只綿が大量に詰まっていて、血でドス黒くなっています。血はパカパカに乾いて固まり、綿は傷口にへばり付いている為、綿を外せそうにもありません。いや、外せる訳がない。外したら最後、未だ再生し切っていない皮膚を剥がして、大激痛&大流血を起こすのに決まっています。その時は夜の11時近くでしたが、私がP太に手術痕を見せて説明すると、彼は青褪めて、ただちに私を緊急病院に連れて行く事にしました。
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私の地元の病院には、救急車を受け入れる緊急病棟は今は廃止され在りませんが、患者が自ら駆け込めば24時間診て貰える「ウォークイン・センター(緊急外来治療院)」なら在ります。ただしウォークイン・センターは、患者が自力で来られる位なら、十分元気な証拠だと勝手に受け取り、診察を断る場合もあるそうです(おいっ)。GPの時間外、土日、または1~2週間待ちの予約なんて待ってられない人が、このウォークイン・センターに集まる訳ですが、その代わり何時間も待つのは必須。特に年末の家庭医が閉まっているこの時期は、貼り紙には平均6時間待ちと書かれていました。また壁には、「病院スタッフを大切にして下さい。我々は貴方を助ける為にここに居るのです」との貼り紙も在りました。長時間待つ事にブチ切れて、暴力を振う患者(またはその付き添いの家族)が後を絶たないからです。その為か、病院受け付けの窓口は、銀行以上に厳しく透明板で塞がれ、僅かに開いた隙間からスタッフと会話するのは、中々聞き取れなくて骨が折れました。
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しかし今回の私の場合、誰よりも緊急を要すると判断され(トホホ…)、長い順番待ちを飛び越えて、真っ先に診察して貰えました。看護師さんは、私の患部を見るや否や途方に暮れ、即座に医師を呼びに行きました。看護師さんもお医者さんも、未だイギリスに来て年月の浅いインド人のようで、クセの強い英語を聞き取るのは、ネイティブのP太でも一苦労でした。案の定、直径5cmの傷痕の中の綿は、大量の血液と膿を吸って乾き切って張り付いていたので、潤わせる為に穴の中に大量の水が注ぎ込まれました。綿が湿って柔らかくなったところで、看護師さんは黒ずんだ綿をピンセットで少しずつ取り出しました。綿は紐状でギッチギッチに穴に詰め込まれてあり、看護師さんが引き出しても引き出しても、まだまだ驚く程大量に出て来ます。その様子は、夫には腹から腸を引き出しているスプラッタな光景にしか見えなかったそうです。
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綿を抜き切った後の腹の穴は、見たら最後気絶しそうで、自分では確認する気には全くなりませんでしたが、P太の話では、ゴルフ・ボール位の大きさが開いていたそうです。そんなデカイ穴が腹に開いたままでも、人間が大して痛みも感じず生きていられることと、それでも内臓に到達しない自分の皮下脂肪の厚さに、妙に感心しました。この汚い状態の綿を一週間取り替えずに詰め込んだままなんて、明らかにとんでもない事で、悪化しなかったのが奇跡的だと医者に言われました(そーでしょうとも)。その日、病院から戻ったのは、夜中の2時過ぎ。後日イギリスの家族にこの事を報告したら、心底心配してくれて、その手術した病院やGPを裁判で訴えるべきじゃないかと言われ、返って事の深刻さに益々凹みました。とにかく、やっと綿もバッドも無事交換して貰え、その後は地元病院に、事前予約さえすれば2日毎にパッド交換の為に通えるようになりました。
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地元病院は、徒歩で往復するにはちょっときつい距離だったので、いつもP太の出勤前の朝一番の時間帯に予約し、車で連れて行って貰いました。最初に担当してくれた看護師さんが、とても真っ当な誠意の有る人で、一貫して同じ看護師が手当てして経過を確認した方が良いからと、出来るだけ彼女の割り当て時間を予約するように手配してくれました。傷の治りが遅い時には、手当て法を工夫して変えたりと、最後まで責任を持って診てくれました。最後の最後に、やっとプロ意識を持つ医療従事者に出会えて、本当に心底ホッとしました。しかしその治療室にも、「看護師を大切に。暴力は犯罪です。警察に即通報します」みたいな張り紙が(涙)。一体患者の暴力が、どれだけこの国では日常茶飯事なのか…。結局、膿が出切って傷が塞がり、通院しなくて済むようになったのは、地元病院への駆け込みから2ヵ月以上経ってからでした。患部に絆創膏だけ貼って、普通に風呂に入れるようになったのも、ようやくその頃からです。
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傷は一応塞がったものの、痕はボコボコと盛り上がり青黒くくすみ、大変醜い状態で残りました。もし嫁入り前だったら、もう嫁に行けないレベル。ドキュメンタリー番組で見た、浮浪者の腹のナイフの刺し傷が、これにそっくりでした。本来のヘソの横に、もう一つ非常に不恰好なヘソが出来たようにも見えます。帰国の際、温泉で母にこの傷痕を見せたら泣いていました。術後一年以上経過した最近、改めて手術痕を確認すると、一部が臭いカサブタで塞がっているのを発見。恐ろしい事に、未だ膿が出続けているんですね…(汗)。イギリスで最初に受けた手術が、単に奇跡的に大変良かっただけで、どうも周りの話を聞くと、これがイギリスの医療では平均だそうです。もしこのアテローマが再び腫れても、もう二度とイギリスで医者には掛かりたくありません。少なくとも、あの女医さんだけは勘弁。―――それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。




by piyoyonyon | 2017-12-31 15:12 | イギリス生活・文化


こんにちは! ぴよよんです。英国から蚤の市等で出会った愛しのガラクタ達を御紹介する雑貨手帖も2冊目となりました。1冊目と共に宜しくお願い致します。


by piyoyonyon

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